2020年9月14日月曜日

ドロちゃんのはなし その①

ドロちゃんのはなし その①

小さな奇跡

 

9月15日は、「悲しみの聖母」の記念日です。

 


  この日を迎えると思い出すひとりの姉妹がいます。悲しみの聖母の修道名を持つ、シスターマリアドロレス藤原です。3年前に84歳で、癌のため亡くなりました。彼女は、姉妹達の間では、ドロちゃんと言う愛称で呼ばれ、愛されていました。北海道出身、寡黙で働き者、特に洋裁の腕は一流でした。姉妹達の修道服はほとんどドロちゃんが作ってくれたものです。


 大腸癌が肝臓に転移した末期癌が見つかってから、半年で天に召されました。できる限り修道院で過ごしたいと言うドロちゃんの希望で、私たちは、彼女と最後の歩みを共にする恵みをいただきました。この間、たくさんの素敵な思い出を残してくれましたが、今日は一つの小さな奇跡をお話ししたいと思います。


 ドロちゃんは、病状が悪化し、やっと動ける状態の中にあっても、姉妹達の修道服を最後まで作り続けましたが、最後の最後の作品は、総長のためのペチェラ(修道服の下に着るもの)でした。ドロちゃんは、これを自分が死んでから、ローマにいる総長に送ってほしいと頼みました。そこには感謝の手紙が添えられていました。

 そして、もう寝たきりになったドロちゃんは、言いました。「お庭にラベンダーが咲いているから、それをとってきてちょうだい。総長様に送るプレゼントに入れたいから。」頼まれたシスターは、ドロちゃんがおかしくなったと思ったそうです。なぜなら、11月中旬のこの時期、軽井沢修道院のお庭には、枯れ葉しかないのです。ラベンダーなんて咲いているはずがありません。寝たきりの状態で、実際に見に行くことも出来ないのに、ドロちゃんは確信を持って言うのです。咲いているって。そうです。本当に咲いていたのです。ドロちゃんがかわいがって育てたラベンダーは、季節を無視して、ドロちゃんの望みに応え、美しい花を咲かせていたのです。


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