2016年6月24日金曜日

千両みかん



千両みかん

シスターL

 修道院もすっかり夏服に変わりましたが、つつがなくお過ごしでしょうか。各地の梅雨入りは季節の便り。養成院の姉妹たちに、今“熱中症”“脱水症”という単語を教えています。食事の時、養成院のシスターがお茶を出してくれました。“片手ですみません”といいました。その時、蒸し暑さの中で一陣の風が吹きました。言葉の不思議、言葉の力を思いました。

彼女たちによって私も日本語に気づかされております。長い間いい加減にしてしまった言葉を改めて発見しています。“前をすみません“ 食事に先に箸をつけるときは ”お先に 料理を勧めるときは”如何ですか“ ”ごちそう様でした“ ”ゆっくり召し上がってください“ 別にどうということはありませんが彼女たちが言うと言葉が輝きます。パウロは”愛は礼にそむかない“といっています。私たちの創立者も礼儀正しい修道女になりなさい。愛は礼儀だからと諭しています。

 昼食の後、御皿洗いをしながら養成院のシスターが“千両みかん”という落語知っている?“と聞きました。テキストに載っているそうです。”多分みかんで財を成した紀伊国屋文左衛門の話でしょう“と適当に答えました。後で心配になって調べました。

古典落語の演目にありました。あらすじを読んだのですがどこにも紀伊国屋文左衛門は出てきませんでしたし、ちっとも面白そうでもありませんでした。気の病に伏せた若旦那の為に番頭さんが季節外れのミカンを探す話です。若旦那、番頭のほかに親旦那、みかん問屋、八百屋などが出てきます。これらの登場人物が噺家の手にかかると立ち上がって歩き出し、喋りはじめ面白くなるのですね。いわゆる名人芸というものを聞いてみたくなりました。

 お陰様で日本語から外国語にも関心を持ち始めました。 私たちの修道会の共通語はスペイン語です。東京修道院の日本人の姉妹の半分はスペイン語が話せます。寮生がお祈りの時、今いろんな語学を履修して勉強していると話しました。英語はもちろんスペイン語、フランス語、ラテン語。“みんなに、何様になるつもりだと言われそうですがチャンスがあるから挑戦してみました。将来コミュニケーションの役に立つかもしれないし”と言いました。

 英語のほかに第二外国語一つ選択などという時代はとっくに終わったのですね。いろいろな言語を駆使して世界の人々と交わり理解し合う時代。神様は私を良い時代においてくださいました。